セッション1の議論の中で、「少なくとも非核兵器国に対しては核兵器を使わないという合意を作る」というお話がでてきました。いわゆる「消極的安全保証(NSA: Negative Security Assurance)」という概念です。
この考え方の下で、実は、すでにNPT上の5核兵器国(米、英、仏、露、中国)は非核兵器国に対し核兵器を使用しないことを、中国は条件なしに、他の4カ国は条件付きで宣言しています。
1995年の話です。またこの5核兵器国の宣言を受けて、国連安保理も同じ年に消極的安全保証に関する安保理決議(S/RES/984(1995))を採択しています。
さて、この消極的安全保証をめぐっては、ジュネーブの国連軍縮会議(CD: Conference on Disarmament)で議論が行われることになっているのですが、正式な議論はいまだに開始されていません。何故か。
それは、1996年にCDが包括的核実験禁止条約(CTBT)の採択に失敗して以降、機能不全に陥っているためです。この辺りのお話はまた今度詳しくさせていただければと思います。
ちなみに、消極的安全保証について、一方的宣言に留めるのではなく、法的拘束力を持つもの(すなわち国際法)にすべきとの議論もあります。これはNPT運用検討プロセス(5年毎に開催されるNPT運用検討会議に向けた準備会合を含むプロセスの総称)で途上国を中心とした非核兵器国の多くが主張している論点です。
いずれにしても、唯一の軍縮交渉機関として設置されたCDの機能不全により、消極的安全保証に関する議論が1995年から30年近くたった今でも進んでいない。
この状態を少しでも打破するために、国の代表で構成されるCDではなく、1.5トラック、もしくは2トラックの場で消極的安全保証について議論すべしといった声も上がっています。
1995年に一方的宣言がなされてから、28年。NPTプロセスの場では主要な論点の一つにもなっています。
「非核兵器国に対しては核兵器を使わない」
「消極的安全保証」という名の下、30年近くの長きに亘り取り上げられてきた重要な論点ですので、念のためここで紹介させていただきました。
「消極的安全保証」というキーワードで関連の文献をお調べいただければ、理解は深まるものと思います。
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