top of page
WNP事務局

すべての国の安全保障が損なわれないという原則(the principle of undiminished security for all)

 広島サミット記念シンポジウムでも簡単に触れさせていただきましたが、この原則は、大成功といわれた2000年NPT運用検討会議の最終文書に盛り込まれた「核軍縮に向けた13の措置」の前提として、NPT締約国が合意したものです。G7広島サミットで採択された「核軍縮に関する広島ビジョン」の冒頭でも言及されています。


 なぜこの原則が重要なのかといえば、「核兵器がなくなることによって自国の安全保障が脅かされると考える国がある限り、核軍縮・核廃絶は実現しない」からです。


 何故、核兵器を持ちたいと考える国がいるのか。


 もっとも単純な答えは、自国の安全(security)のため(securityという言葉をここでは「安全保障」ではなく「安全」と訳させていただきます。その方が分かりやすいかと思いますので)。


ソ連崩壊後核兵器を放棄したウクライナがロシアに侵攻されたことで、ウクライナは核兵器を手放すべきではなかった(正確には手放したのではなくて手放さざるを得なかったわけですが)、ウクライナのように侵攻されないためには日本も核兵器を持つべし、といった議論が持ち上がったことからも自国の安全を担保する上で、核兵器に期待する考え方があることはお分かりいただけるかと思います。


 実際、NPTができるまでの間、アメリカに続いて、列強国が次々に核開発に乗り出したのは、自国の安全を守るためでした。

 安全(security)というのは非常に主観的な言葉です。何をもって安全と考えるかは、その国次第というところがあります。覇権を狙う国にとっては、覇権が脅かされること=安全が脅かされると考えるかもしれません。勢力均衡が絶対的に重要と考える国にとっては、勢力均衡が崩れること=安全が脅かされるということになるかもしれません。安全と感じるかどうか、それは国によって違うということです。


 核兵器を巡る問題はとても複雑です。

 いずれにしても、現在核兵器を保有する国は世界に9カ国あり、核兵器開発に至った経緯は様々ですが、共通していることは、核兵器を持つことによって、彼らが考える自国の安全というものをを守りたいと考えたことが背景にあります

 アメリカが日本や韓国に拡大抑止という形で(ドイツには地理的要因から核共有という形で)核の傘を提供しているのは、これらの国が自国の安全を考えて核兵器開発に走らないようにするためだと考えられているのはそのためです。


 このように考えると、核廃絶を実現するためには、「すべての国の安全保障(security)が損なわれない」という原則が重要であることがお分かりいただけるのではないかと思います。

 では、そのためには何をしなければならないか。


 我々が取り組まなくてはいけないのは、核兵器を保有する国が参加する可能性が低い国際法を作って核兵器を禁止することではなく、どのようにしたらすべての国が、核兵器がなくても自国の安全が確保できる、もしくは、核兵器がない方が自国の安全が確保できるという状況を作れるか、ということなのではないでしょうか。







Bình luận


bottom of page